ぱせタネ1 「ダラスナス」

「いってきます」

ゆうかは慌ただしく玄関を飛び出して行った。「いってらっしゃい!気をつけてね!」

と声をかけたが、ゆうかはもう学校へと駆け出していった。ママは心配で玄関の外へ出たが、1歳になったばかりの隼也を一人置いたままだったので、すぐに家の中へと引き返した。

 家の中では隼也の目の前にゆうかのパジャマが脱ぎ捨てられ、隼也はそれを見ながらニコニコしていた。

「もう!いつも、いつも。脱ぎっぱなし!だらしない!」

ママはイライラしながら、学校へと行ったゆうかに聞こえると思えるぐらい大きな声で叫んだ。その大きな声にビックリした隼也が突然泣き始め、ママは慌てて隼也を抱き上げて、

「ごめん、ごめん。びっくりした、ごめんね」ママは泣いている隼也をなだめるように言いながら

「もう、いっつもなんだから!言ったことをやらない。いい加減にして!」

と日頃のゆうかのだらしなさも頭にうかび今日も大噴火。ママは文句を言いながら、イライラ!

そんなママを見て、隼也はいつも泣いてばかりだった。

「笑顔、笑顔」

とママは思うが、苛立つ自分が嫌になって必ず落ち込む。毎日がそんな事の繰り返し、

「あ〜イライラする〜」

と心で思い、どうしても笑顔になれないママ。

「いい加減どうにかしないと!でも、ゆうかやパパをみてると、あの“だらしなさ”になにかと一言いたくなる」

とつぶやいた。

 翌日の朝、ゆうかとパパが出かけたあと、 

「もう!またおんなじ、何回言ったらわかるのかな!今日も脱ぎっぱなしじゃない!もう!ダラシな〜い!!」

大きな声を張り上げた。その時、隼也が泣くと思い見てみたら脱ぎっぱなしのパジャマのそばでニコニコ。

「ダラスナイ♪ダラスナイ♪ぬぎっぱなしは、ダラシナシ♪」

なにかおかしな歌?が、かすかに聞こえたような。まさか隼也が・・・

「ダラスナイ♪ダラスナイ♪ぬぎっぱなしは、ダラシナシ♪」

また?今度はハッキリ聞こえた。

「隼也なの?」

そのおかしな歌声は脱ぎっぱなしのパジャマの下から聞こえてくる。と、パジャマがゆっくりゆっくりと動きだした。

 パジャマは洗濯機の方へとむかっているようだ。そのあとをやっとヨチヨチ歩きだした隼也がニコニコ笑いながらついていく。ママもわけがわからずついて行く。そしてパジャマが洗濯機の前までくるとポ〜ンとまい上がりフタの開いていた洗濯機の中へと吸い込まれていった。

「パジャマがひとりで!うそ〜」

まい上がったパジャマのあとを見るとそこには紫色と赤色をしたものが2個並んでいて、

「ダラスナイ♪ダラスナイ♪ぬぎっぱなしは、ダラシナシ♪」

と歌をうたい、踊っていた。ママはビックリ!隼也は手を叩きながら大笑い。

 歌い踊ってる紫色と赤色をしたものは高さ20センチぐらい、野菜のナスに似ていた。紫色のほうはまん丸で、赤いほうは細長い。それには手と足がついていて、それを器用に動かしながら

「ダラスナイ♪ダラスナイ♪ぬぎっぱなしは、ダラシナシ♪」

と歌い踊っている。

「えっ!なに!あんたたち!なんなの?」

ママはビックリして叫び、

「ロボット?パパが買ってきたの?」

とそのナスに似たものに向かって言った。

その紫色と赤色の不思議なものは

「僕らはダラスナス!」

と落ち着いた声で答えた。

「僕らは妖精なす。僕はキナス。こっちはコナス」

赤色をした細長いのが、紫色の丸いのを指差しながら言った。

「妖精?ウソでしょ。なんの?」

「ダラシナシの成長を止めるためきたナス」

と紫色のコナスが言った。

「ダラシナシの成長を?なにそれ?」

赤色のキナスが

「人は“ダラシナシ”というタネを体の中にもってるナス。その“ダラシナシ”のタネは時間をかけて芽をだし成長していくナス」

「それがどうしたの?」

「ダラシナシの芽は体の中で成長し、それはある程度成長すればそれ以上は大きくならないので問題はないナス」

「問題がなければ大丈夫なんでしょ。うちと関係なかったら、よそに行ってよ!忙しいんだから!」

「そのあとがあるナス」

とキナスが言い、ダラスナスたちが話し始めた。そのダラスナスたちが言うには

 今、人の体の中でダラシナシの成長がとまらず大きくなり続けていって、それが大問題になっていて、人を“だらしなく”させていき、グータラにしてしまうというのだ。ダラスナスたちはそのダラシナシの成長を止め“だらしなく”なりグータラになっていく人を救うために妖精となってきたと言った。

話を聞いたママは

「そんなことわたしには関係ないわ」

と言った。

「それが大ありナス。ママさん、ゆうかちゃんやパパさんが、今その危険“だらしなく”グータラになりつつあるナス」

「そんなおかしな話。それよりあんた達の方がおかしい。妖精とかなんとか言って、人をだまして何かたくらんでるんじゃないの。」

とママが言った。

ママはダラスナスたちの話しがあまりにも飛躍しすぎて、いい加減ダラスナスたちに早く出て行ってもらいたいので冷たく言い放ったが、コナスが、

「そうではないナス。ダラシナシは人を“だらしなく”していき“だらしない”人を増やし、地球を“だらしない”人だらけにしてダラシナシの楽園を造ろうとしているナス」

「それじゃ、パパやゆうかがそのダラシナシによってだらしなくなってると言うの。そんなバカな話!信じるわけないでしょ。それにダラシナシの楽園?なにそれ」

ママはあきれ返って言った。

「ママさんこれは本当の話ナス。今はまだダラシナシの存在に気づいてないだけでこの先、ダラシナシによって“だらしない”ひとが増え続けていったら大変なことになるナス。」

コナスが言い、キナスが続けて

「ママさん。ママさんもいつダラシナシによって、だらしなくされるかわからないナス。その前に僕たちダラスナスがママさんに協力して、ゆうかちゃんやパパさんをダラシナシから救っていくナス。」

「そのためにここに来たナス。」

とコナスが言ったが、ママは戸惑うばかり。

「ダラシナシって本当にいるの。」

「ゆうかちゃんやパパさんのだらしなさは全てダラシナシによってナス。そのダラシナシのことがわかれば、ゆうかちゃんやパパさん、また他の“だらしない”ひとを助けることができるナス。ボクとコナスはママさんを助け家族仲良く、笑顔になれるように応援に来た妖精ナス。」

キナスはママにわかってもらおうと必死に話した。